えりまとの在る所

記録を綴って愉快に生きようと試みる

2023年1月7日 夏目漱石とゲシュタルト崩壊

夏目漱石の文中にゲシュタルト崩壊についての件があったので紹介します。

 

「どうも字と云うものは不思議だよ」と始めて細君の顔を見た。
「なぜ」
「なぜって、いくら容易い字でも、こりゃ変だと思って疑ぐり出すと分らなくなる。この間も今日の今の字で大変迷った。紙の上へちゃんと書いて見て、じっと眺めていると、何だか違ったような気がする。しまいには見れば見るほど今らしくなくなって来る。――御前そんな事を経験した事はないかい」
「まさか」
「おれだけかな」と宗助は頭へ手を当てた。
「あなたどうかしていらっしゃるのよ」
「やっぱり神経衰弱のせいかも知れない」
「そうよ」と細君は夫の顔を見た。夫はようやく立ち上った。

 

夏目漱石『門』より。

 

読書について記録してませんが、毎日1時間ばかり読むようにしてます。

太宰治の全集と、草枕の再読です。

 

それでは。